2006年2月18日(土)にOAされた「土曜ワイドラジオTOKYO 永六輔その新世界」(TBSラジオ)で、ゲストの秋本治先生が出演された部分(+α)のテキスト起こしです。
 管理人の聞き取りによる物ですので、若干不正確な部分もあるかと思いますが ご了承下さい。(ボイスワープロが欲しかった…^^;)
 お気付きの部分がありましたら、メッセージフォームからお知らせいただければ幸いです。

☆OAの情報をメールで下さったK様・録音協力してくれた友人N君に感謝します。
※文中に、写真を追加しました(2006.10.2)。クリックすると、別ウインドウに拡大表示します。
 画像は全て、管理人が個人的に撮影した物です(撮影時期:2006年6〜8月)。

こち亀データベースTOPへ


(AM8:33)
永六輔(メインパーソナリティ/以下・永):僕は亀有っていうと、子どもの時の記憶と重なるんですよ。
外山惠理(スタジオアシスタント/以下・外):へえー。
永:蓮光寺さんっていうのが、うちの母の弟の寺なんです。
外:あ、そうなんですか! へえー。
永:で、何かっていうと蓮光寺、亀有に行くから…っていう、子どもの時代の記憶が、急に今日は強まっております。
外:はいー。
永:で、その亀有の駅前に…銅像が建ったの?
外:そうですよ、両さんの…
永:銅像…でいいんですね、ブロンズ像?

泉貴子(現場レポーター/以下・泉):おはようございます。
外:おはようございます。
泉:今日はですね「乙女探検隊」、葛飾区亀有にお邪魔しております。永さん、両さんがですね、「よく来たな!」と言わんばかりに…
永:はははははは(笑)。

泉:手を上げてですね、ニコニコした顔でこちらを向いていますが…今 中継している所は、JRの亀有駅の北口の駅前なんですね。
永:はい。
泉:まあ、駅からの方が沢山いらっしゃって、また東武バス、六ッ木(むつぎ)都住…都営住宅に行くバスも走っております。

泉:今日 亀有をご紹介いただきますのは、漫画「こちら葛飾区亀有公園前派出所」作者の秋本治さんです。お隣にお越しいただいております!
秋本治(以下・秋):どうも、おはようございます。
外:おはようございまーす。
永:先日ありがとうございました。
秋:はい。
泉:あの、一週間前の今日、この亀有駅の北口に「こちら葛飾区亀有公園前派出所」の主人公・両津勘吉の、両さんの等身大のブロンズ像がお目見えしたという事で。
秋:そうですね。今までは派出所にいなかったんですけども…先週から ようやく戻ってまいりましたので(笑)、是非みんな見に来て下さい。
泉:はい。で、こちら163cmの両さんなんですが…
秋:あ、そうです。実物大ですね。
泉:あの大きさなんですね、じゃあ両さんは。
秋:そうです。
泉:で、葛飾の亀有駅北口の交番…普段はですね永さん、お巡りさん いらっしゃらないんですが…今日は、両さんにそっくりなお巡りさんが。
永:はっはっはっは(笑)。
泉:先ほどから ずっといらっしゃってですね。あの、両さんの銅像が盗まれないように見張っている…
秋:そうですね、見張ってもらってます。お巡りさんをお巡りさんが…見張ってもらってるという(笑)。
泉:(笑)そんなところなんですが、今日は、生まれも育ちも こちら葛飾亀有の秋本治さんに、亀有の楽しい記憶・そして怖い記憶…など、様々な少年時代の記憶もあわせてご紹介いただきたいと思います。後ほど、よろしくお願い致します。
秋:よろしくお願いします。
永:よろしくー。

(AM8:57)
永:さあ、この後 皆さんに亀有をご紹介したいと思います。
外:はい。
永:秋本さん、もちろん その亀有を舞台にした漫画を描いてらっしゃるんですが…
外:ええ。
永:お手紙を沢山いただきました。こういう…要するに“こち亀世代”の皆さんが いかに多いかっていう事とね。
外:はい。
永:一方今度は、私は「のらくろ」(田河水泡 作)世代なんですね。
外:ほおー。
永:のらくろと この(両津)巡査長は違いますよ、違うけど…「のらくろ」を、子どもの時から何十年も見ながら…のらくろも出世してくんですね。
外:はあー。
永:そこが違うんです。出世しないでしょ?(笑)
外:あはははは(笑)、両さん?
永:両さんは(笑)。で、亀有という特定の地域で。
外:ええ。
永:だから今日は そこがとても懐かしいんですが、さっき言ったように、僕 大好きなおじさん…亡くなったんですけど、前進座の大好きなおじさんだったんですね。前進座を子どもの時から観てるのは、その亀有のおじさんのおかげなんです。
外:ああー。
永:で、行くと必ず北口…つまり、今度銅像が建って、お巡りさんのいない交番がありますね。
外:ええ。
永:その交番の前をしばらくそのまま行くと、右側の角に「ハニー」っていうフランス料理屋さんがある。
外:はい。
永:亀有で、フランス料理っていうと変に気取ってるけど気取ってない。
外:へえー。
永:全然気取りません、亀有の料理です。そこに連れてってくれるの、そのおじさんが。僕が…(※)…するまで。(※聞き取れませんでした)
外:へえー、そうなんですか。
永:いつでも、そこへ連れてってくれました。そういう懐かしさ…さっきも言うように、あの…ゲストはもちろん秋本さんでらっしゃるし「こち亀」なんですが、その間に自分のつながる思い出が入って来ると、レポートが楽しいんですよね。
外:そうですよねー。さあ、この後…秋本治さんが、葛飾区亀有界隈を案内して下さいます。

(AM9:01)
外:さあ、ゲストの方にゆかりの街・場所をご紹介いただく「乙女探検隊がゆく〜関東新地図」。今日は、漫画家の秋本治さんに葛飾区亀有界隈を案内していただきます。
永:まずですね。
外:ええ。
永:「こち亀」って言うだけで、皆さん「ああ、はいはい」「秋本さん、はいはい」っていう方もいらっしゃるけれど、それは本屋さんで本を買う場合の事で。ラジオを聴いてらっしゃる方の中には、「何、どなた?」「なんで亀有なの?」「秋本さんってどういう人?」っていう方も必ずいらっしゃいますので…
外:はい。
永:その方たちには、八王子のミナヨさんのお手紙がとてもお手伝いをします。
外:はいっ。
永:いきます。八王子のミナヨさん…東京を真ん中にして、亀有から八王子っていうのは随分…向かい合って離れてますけどね(笑)。
外:はい。
永:「時にはアルバイト・時にはギャンブルに熱中する公務員らしからぬ 破天荒ぶりの一方で、正義感にあふれ人情味豊かな仕事ぶりで下町の人気者である警察官・両津勘吉を主人公とする漫画『こち亀』。それをデビュー作として、以来30年 描き続けている漫画家の秋本治さん。その作品の中には、『こち亀』のキャラクターを登場させて、子どもたちに科学などの知識を気楽に身につけさせる物も ちゃんと含まれています。」
外:はい。
永:…という、この書き方で…秋本さんも納得して下さると思うんですね。
外:そうですね。
永:さて、その秋本さん、大好きだという方たちが沢山いらっしゃいます。秩父市のカサハラタカノリさん、「こちら葛飾区亀有公園前派出所」…これが正しいんですね。
外:そうです。それを「こち亀」と略してるんですね。
永:「こちら葛飾区亀有公園ジョ…」
外:違います。
永:公園前派出所(笑)。
外:(笑)
永:「…30年連載・主人公のブロンズ像ができた今回、おめでとうございます。」
外:ねえー。
永:「でも私、愛読者なんですが、作者の秋本さんのことは知りませんので、今日が楽しみです。」
外:ああー。
永:「今日 楽しみに聴いています。」…狭山市のスズキヒデアキさん、こちらも「中学生時代から読み続けています」。土浦のソエノさん「いつの頃から始まったのか…もうほんとに過去なんですが読み始めて、50才に届いた今もまだ読んでます。とことんおつきあいしますので、とことん描き続けて下さい」…葛飾区のワタナベさん「30年前になりますが学生時代、週刊少年ジャンプは非常に新しい感性を持った新人を続々輩出していた時期でした。秋本さんもそのお一人でした。当初“山止”…山上じゃなくて“山止たつひこ”と名乗ってらしたと思います。大人気ギャグ『がきデカ』の山上たつひこさんの名前をもじってなんだなあと…」
外:ああー(笑)。
永:「…思ってる内に今のお名前になって、無茶苦茶なキャラクターが活き活きと…」という事ですね。松戸市のオオタミエコさん「亀有北口から3分ほど歩いた所に おばが床屋さんをしておりましたので、よく訪ねました。今日は楽しみです」…川口市のヤマガミさん、それから台東区日本堤のタニグチリョウさん。
外:はい。
永:…この方もリョウさんなんだ。で、お巡りさんの…主人公の両さんは「なんで結婚しないのですか? 両さんは 下駄ばきなのに、なんであんなに足が速いんですか?」。
外:(笑)
永:(笑)これは後で…ご質問です。「山上(※)たつひこ時代からの愛読者」、東村山市のシマダチアキさん。(※山止の誤り?)
外:はい。
永:それから、あのー…銅像ができた事でね、沢山お手紙をいただいてます。アメオのアライさん、横浜のハギサワさん、杉並のナイトウイズミさん。で、なおかつ「リョウキチ(※1)という名前が昭和9年生まれの実家の父と同じなので、とても親近感を持って読んでいます」というのがナイトウさん。他に、こち亀時代(※2)から沢山…「ようこそ、ようこそ、ようこそいらっしゃいました!」伊那市のフクオカテルユキさんもそうです。(※1:勘吉の誤り? ※2:世代?)

永:今度の銅像がね?…等身大で建ったのを、おめでとうございますっていう… あの銅像の写真を、私も見ました。
外:はい。
永:見てね、三船久蔵(みふね・きゅうぞう)さんの銅像を思い出したの。
外:ふーん?
永:三船久蔵さんっていうのは、柔道の名人です。
外:はい。
永:で、この方の銅像が…地べたに直接立ってんです。
外:ああー!
永:銅像って普通、台座があってね。
外:ああー、ちょっとあの…頭の上の方にね。見上げて見る感じですもんね。はいはいはい。
永:みんな見上げる所に銅像があるの。それは そうじゃなくて、普通に立ってるの。普通に…
外:ええ、目線で。
永:同じ寸法で。台座が無くて。
外:ああー、なんか親近感がね。
永:それがいいんですよ。
外:ええ、ええ。
永:「なるほど、こういうお巡りさんなんだ」っていう風に見上げるんじゃなくてね。
外:あ、なるほどー。
永:で、それまで僕はこの(両さんの)銅像を見るまでは、三船久蔵さんの銅像が唯一、真っ平の所に 普通に立ってて、しかも小柄なんです。
外:はい。
永:で、「ああ、この銅像の建て方がいい!」という風に思って…「さすがは亀有!」と思いました。
外:はいー。
永:はい、それではいきましょう。泉貴子さんー?

泉:はい! 改めてご紹介いたします。
永:はい。
泉:本日のゲスト、漫画「こちら葛飾区亀有公園前派出所」、「こち亀」の作者・秋本治さんです。秋本さん、よろしくお願い致します。
秋:はいどうも。よろしくお願いします。
外:よろしくお願い致しまーす。
永:あの、改めておめでとう…
秋:あ、どうもありがとうございますー。
永:…おめでとうって言うのかな、やっぱり。銅像に言うのか(一同笑)。
秋:嬉しいですねー。


泉:両さん、先ほど こう右手を上げて…ガッと大きい口を開けて笑ってましたけども。
秋:そうです。あれは亀有に来た人に「ようこそ、いらっしゃい」っていうポーズなんですね。だから あの右腕に「ぶら下がってもいいよ」ぐらい すごく固く、強く作ってありますので。
外:はあー。
泉:肩だけ丈夫にできている。
秋:そうなんです。あそこは、そういうのを想定してます。
永:へえー。
泉:ほんとに永さん、台座が無くてですね…お子さんが、ほんとに両さんの肩につかまれるように。
秋:そうですね。あのー…子どもが一緒に写真撮れて、乗っかれるようにぐらいは考えてあります。
永:なるほどー。

泉:あの、ここで僭越ながら秋本さんのプロフィールをご紹介させて頂きます。
秋:はい。
泉:えー、秋本治さん、1952年(昭和27年)・こちら葛飾区亀有のご出身。今、53才…
秋:そうです。
泉:…になられたという事で。生まれてからご結婚されるまで、ずーっと この亀有にお住まいだったという事で。
秋:そうですね。
泉:1976年(昭和51年)から続く、こち亀…「こちら葛飾区亀有公園前派出所」は、発行部数が1億3000万部を突破。
外:うわー。
泉:そして今年、連載30周年。150巻を販売。両さんの物語、今年1450話になると。
秋:そうですねー…長いですねぇ(一同笑)。ほんと自分で言うのもなんですけども。
泉:長かったですか?(笑)
秋:長かったですねぇ。
泉:で、一週間前の今日(2月11日)、10時だったので…
秋:そうですね。ちょうど今の時間に あの銅像が立って…。みんな、色んな所から亀有に集まってもらいました。
泉:お目見えしたということで。
秋:そうですね、はい。そうです。
泉:秋本さん、両さんのようなゴツい方を私 想像してたんですけれども…私より細い…スリムなですね(笑)。
秋:あの、皆さん良く作者に会ってびっくりするんですけども…すごい痩せてるんですよ。
泉:(笑)
秋:やっぱり漫画のイメージからすると、どうしてもゴツい…
永:(笑)
秋:あの、たくましい人 想像するらしいんですけども。
泉:ええ。
秋:非常に痩せて…文科系でして(一同笑)。申し訳ありません。
泉:いえいえ(笑)。

泉:今日は亀有をご案内いただきますが…
秋:はい。

泉:先程は両さんの銅像の所・北口からですね、今度はJRの亀有の南口に移動して来て…「ゆうろーど」というですね、商店街…元々「亀有銀座商店街」と呼ばれてた場所なんですが。
秋:そうですね、昔は銀座通り商店街ですね。
泉:はい。商店街(には)永さん、街灯ってありますよね。で、街灯の両脇にはですね…ねじり鉢巻きをした両さんがピースをしてですね。
秋:(笑)
永:なるほどー。

泉:走ってるようなポーズの旗がですね、街灯にズラーッと。赤い旗がついております。この「ゆうろーど」なんですけれども、そこを350mほど…
秋:はい。
泉:…あるという事なんですが、ご自宅が元々この駅の奥の所。
秋:そうなんです。えー、この「ゆうろーど」をですね、まっすぐ行きますと…
泉:はい。
秋:ちょうど突き当たりに亀有警察があったんです、昔の。いっぱい建物が。
泉:はい。
秋:亀有警察の所を左にずーっと行きますと…200m行くと、亀有名画座っていうのがありまして、昔の亀有東映…まあ地元ではカメカンって言ってたんですけど亀有会館。その隣の魚屋が、実家のうちなんです。
泉:ええ。
秋:あと、昔 魚屋ずっとやってまして…
永:へえー。
秋:だからそうですね、今だともう…そうですね、70(才)ぐらいのおじいさんだと、そういうのご存じだと思うんですけども。
永:なるほど。
秋:だからよく、“魚屋のせがれ”っていう風に言われてたんですよね。「ウオソウ」っていう魚屋でやってて。
泉:ウオソウさん。
秋:はい。うちのお父さんがソウジっていう名前で。
泉:ああー。
秋:で、ウオソウのソウは そのソウですね。ソウジのジっていうので、秋本治の“治”ができたんですね。
一同:ああー、なるほどー。
秋:で、1文字…昔でしたら親から1文字もらうっていうのは…
永:(笑)
秋:…生業でしたので(笑)。

泉:で、今その商店街を歩いて来てご自宅の近く、亀有郵便局から この今…亀有銀行。
秋:そうです。郵便局の前ですね。

泉:ここから駅の方向・南口に向かって「ゆうろーど」を ずっと歩いて行きたいと思いますけれども。
秋:はい。
泉:だいぶ、陽も出て来ましたけれども。
秋:そうですねー。
泉:綺麗に鋪装されて。秋本さんのご本にもありましたけれども。
秋:ずいぶん綺麗になっちゃったんですよねー。昔はここ唯一、コンクリートっていうか 下アスファルトでできてまして…ロウ石で絵が描けたんですよ(笑)。
永:ロウ石ね! 懐かしい。
秋:だから、わざわざここに来て…うちの近所はなかなか…土が多かったんで、ロウ石で描ける所が無かったんで…
泉:(笑)
秋:…わざわざここに来て、車を止めて、地面に描いてたっていう(笑)…ありましたね。

泉:今、商店街…間もなく開く時間ですので、搬入の車なんかも けっこう来てますけれども。
秋:ああ、にぎやかになってますね。
泉:看板も…「亀有食品市場」っていうのも、ありますけれども。
秋:そうです、はい。あそこの亀有食品市場っていうのは、昔から変わってない所で…
泉:ええ。
秋:要するに、いろんなお店が全部固まって一つになってる所ですね。
泉:はい。

秋:で、子どもの頃…小学校3年ぐらいの時ですか。親とケンカしまして…
泉:ええ。
秋:…自分では家出だと思ってんですけども(一同笑)、家 出まして…実際、亀有でどこも行くとこ無くて…その亀有食品市場っていうのが、屋根になってて唯一あったかいんですよね。
泉:ああー。
永:ふふふふ(笑)。
秋:だからそこで1時間ほど…中で水飲んで帰って来たら、「ああ、お帰り。もう夕食できてるよ」っつって…(笑)
泉:ははははは(笑)。
秋:ぜんぜん家出になんなかったんですよ(一同笑)。そのくらい、行くとこが無かったんですよね(笑)。

泉:あのー、本当にこの亀有で過ごした楽しい記憶・それから怖い思いをした時の記憶…
秋:ええ。
泉:…ドキドキした時の記憶。少年時代の記憶が、たくさんあるという事で。
秋:あります。そこらじゅうにありますね、やっぱりね。はい。
泉:なんかあの、お祭りの時は…
秋:そうです。特に亀有はですね、お祭りが盛んなんですよ。
泉:ええ。
秋:で、小さい頃は僕…神輿がしょえないんで、山車を引っ張るんですね。小学校2年の時。
泉:ええ、ええ。
永:うん。
秋:その時、駅前に広い所がありまして…
泉:はい。
秋:そこで山車を止めて、梨とかジュースとか飲み物 配るんですよ。その時 電車通ってましてね。で、小さい頃から僕は泣くとすぐ親にしょわれて電車を見に連れてってもらったんですけれども…
外:(笑)
秋:で、電車を見ると泣くのが止まるって言われて。そのぐらい けっこう電車好きだったんで。
泉:ええ。
秋:で、子どもの頃も そのお祭りの格好で電車ずっと見てたら、山車がまた行っちゃって…別な町会の山車が来たんですよ。
泉:ええ。
秋:で、知らずにその山車を引っぱって行って…
永:はははは(笑)。
秋:駅向こうまで行っちゃいまして(一同笑)。
泉:北口まで…
秋:北口まで行って…その頃、北口行ったことなかったんですね。亀有の駅で遮断されてたんで。
泉:ええ、ええ。
秋:それであのー…どうも周り見たことないし、いる人も良く見ると誰も違うぞっていうんで、あわてて戻って来て…帰り道がわかんなくて。
泉:ええ。
秋:そんで…香取神社にやっと、泣いて行ったら…森の中に入って行ったら、そこが香取神社の裏だったんですよ。
外:へえー。
泉:あの、ちょうど亀有の東側になりますかね。環七の奥ですね。
秋:そうですね。唯一知ってる所が香取神社なんですね、あそこ子どもの頃から行って。で、香取神社がわかれば…もうここからだったら帰り道がわかる!っていうんでホッとした、ってのがありますねぇ。そのぐらい亀有っていうのは、北口と南口で駅を通して分かれてたんです。昔から。
泉:あの、以前は…今は(JR)千代田線と高架ですよね。
秋:はい、高架になりました。
泉:今、上を電車が走ってますけれども。秋本さんお生まれになった時は、道路っていうか…上ではなかった?
秋:あの、南口で道路…道路っていうか電車が上になったのは、昭和42年(1967年)頃で。
泉:ええ。
秋:それまではずっと下 走ってまして…特に貨物の入れ替えが非常にあったんですね、亀有は。
泉:はあー。
秋:だから“開かずの踏切り”で、なかなか開かなかったんですよ。特に小学校の頃は、駅の向こうへは なかなか行かれなかったので…。
泉:今はもう行きやすくなってますけれども、やはり当時というのは、北と南口では全然やっぱり違いましたか?
秋:はい。それで亀有には北口と南口に両方 交番があるんですけども、昔はそういう感じで全然行かれなかったので、北には北の交番、南には南の交番で。
泉:はい。
秋:そのうち高架線になってから、両方とも行けるようになっちゃったんですよ。近い…50mぐらいの距離になっちゃったんで。
泉:ええ、ええ。
秋:それで北口の交番をつぶして…一つでいいんじゃないかってことを言ってたんですけども、北口の交番は 非常に「こち亀」の交番に似てるんですよ。
永:ふふふふ(笑)。

秋:地元から、ぜひ「この交番を見に来る人がいるので潰さないでほしい」ってことで いまだに残ってて。で、しばらくは無人交番として残ってたんですね。
泉:あの 秋本さん、北口の交番がモデルなんですか?
秋:あの、北口の交番の形が、昔からある交番の形なんですね。
泉:ええ。
秋:で、僕がモデルにしたのはもう30年前なんですけれども、いわゆる交番の形なんですよ。だからああいう、亀有に似た交番が けっこう各所にあるんですね。都内に。
泉:ええ、ええ。
秋:で、その交番見るたびに みんな「あ、こち亀の交番だ」っていう(笑)…名前がつきまして。いわゆる、スタンダードの交番なんですね。
泉:元々でも、北口に亀有公園、もしくは交番があったっていうのはご存知なかった…?
秋:あっ、だから知らなかったんですよ実は(笑)。
永:(笑)
秋:言われた当時、南と北と電車を通して分かれてましたので…亀有公園っていうのも、実際 本物があると思わなかったんで(笑)。実際 僕はその公園は、小学校上級生になって遊びに行ったんですけども…
泉:はい。

秋:みんな ふつう公園っていうと、パンダの置き物があったらパンダの公園とか、三角なら三角公園とか言うぐらい…。名前が付いてなかったんですよね。僕は「すべり台の公園」って言ってたんですけども。
永:(笑)
秋:あとから読者から手紙が来て、「亀有公園、ほんとにありますよ」って指摘されて(笑)。
泉:ははははは(笑)。
秋:「確かに あそこそうだ」と思って。名前見たらちゃんと亀有公園って書いてあるんで。それから後は「あそこをモデルにしました」ってちゃんと言うようにしてるんですけど(笑)。
泉:なるほど(笑)。

泉:今、350mの商店街… 百貨店さんがあったり、果物屋さんがあったり。で、目の前に「葛飾 伊勢屋」さんという…
秋:そうです。
泉:お団子と、芋ようかん…あんこ玉、栗蒸しようかん、おはぎ…大きいおはぎ・ジャンボおはぎ、草餅…道明寺、という。
秋:そうです。お赤飯が凄い有名で。運動会とか なんか祝い事があると、みんなお赤飯をここで注文して…僕、小学校の頃から食べてました。あ、ありますね。
泉:「お祝いにお赤飯 1パック400円」と書いてありますけれども。
秋:そうそう。
泉:もう この時期だと桜餅…「桜の葉っぱが薫る」と(くんくん)。こんにちは、おはようございます。
店員:(一斉に)おはようございます。いらっしゃいませー。
泉:お店の方も いらっしゃってます。実はここも、両さんの漫画には登場してるんですね。(※114-4「フリマでひと儲け!!の巻」他)
秋:そうなんですよー。ここはね、両さんどら焼きを作ってくれる所で(笑)。あのー、遠くから買いに来てくれるんですよね。ここの店長の佐藤さんは、両さんの銅像を作る時も大変 力になってくれて…協力していただいて、今回できたということで。
泉:ご主人もいらっしゃってます。おはようございます。
佐藤店長:どうも、おはようございます。
泉:あの、やっぱり「亀有を盛り上げよう」っていう必死の思いで、銅像を建てようという事になったという事ですが。
佐藤店長:おかげさまで、できまして。ありがとうございます。
秋:そうですねー。あの、やっぱり銅像に関しては僕だけじゃなくて、やっぱり亀有の商店街の力とか、区の力とか東京都の力とか…みんなが協力していただいて、っていうことなんでね。だから両さんも、しっかり働いてもらわないとダメですね(一同笑)。
泉:あの、両さんのサインも もちろんなんですが…「両さんが案内する亀有」といって、両さんの絵で…この商店街の絵が描かれてる案内板なんかも このお店にはあるんですね。
秋:あ、そうですね。あります。亀有に来た時に、ここに何があるとか、ここに漫画に出て来た物があるとか…香取神社があるとか。こういう地図がありますので、ぜひ亀有に来た時には、両さんどら焼きを目印に来て下さい(笑)。ここに地図ありますので。
泉:はい、両さんどら焼き…両さんサブレ。
秋:はい、ガチャガチャとかもありますので。
泉:ガチャガチャ、ありますねぇ。
秋:はい、両さんのオリジナルの。

泉:で、今 商店街 まっすぐになってるんですが…脇道にそれた所に、「ゆうろーど仲町(なかちょう)」…仲良しの「仲」に「町」。

秋:そうです。ここ、狭い商店街なんですけども…
泉:アーケードになってますね。
秋:昔は、亀有の北口行く時にはこの細い道路を ずーっと通りますと…まっすぐ行くと、ちょうどあのー、“開かずの踏切り”って言われてたんですけども、そのちょうど真ん前に行くんですよ。
泉:ええ。
秋:今は環七ができちゃって、それが遮断されちゃったんですけれども。そこに行って、北口に行って…僕は、そろばん塾とか習字の塾とか みんな北口にあったんですけど、だから この通りは小さい頃から良く通ってましたねー。
泉:ええ。
秋:で、またお菓子屋さんがあって、「さくらや」さんっていう。
泉:「さくらや」さん。はい、漫画にも出て来ますね。(※管理人の記憶にありません…どこに出て来たかご存知の方、ご教示ください^^;)
秋:はい、そうなんです。ここは お菓子が量り売りで売ってるんで、安く…5円とか、いくらかで売ってるんですね。だからいつも、遠足の前には みんなここに買いに来る訳ですよ。
泉:はあー。
秋:で、遠足の前に来ると みんな友達とここで会って、大きいチョコレート買ったり、「バナナはお菓子に含まれませんよ」ってやつで(笑)…じゃあバナナいっぱい買ってこうとか。この商店街は、よく来ましたねぇ。
泉:でもだいぶ…やっぱりそのー、小さな頃の記憶が今…たくさん お話しいただいてますけれども…
秋:はい。
泉:そのお店が もう無くなってしまったりですとか、街もだいぶ変わって…
秋:そうですねぇ…。でも街は下がコンクリートになって、だいぶ街灯も変わっちゃったんですけども、このアーケードのある商店街だけは、昔とほぼ…幅もそうですし、お店の感じも変わらないんですよね。だからここに来ると、非常に子どもの頃に来た自分っていうのが、ちょっと思い出されますね、はい。

泉:秋本さん、実は何か…永さんに謝りたいことが?
秋:そうなんです。実は、謝りたいことが ひとつあるんですよー。
永:なんです、なんです?
秋:実は、蓮光寺のことなんですけども。あのー…蓮光寺っていうのは ほんと亀有で一番大きいお寺で…中には900坪ある池があったんです。
永:そうです。あの池が?
秋:…雷魚とか いっぱいいる池が。あの蓮光寺の前に中学がありまして、亀有中学というんですね。
永:はいはいはい。
秋:そこ、僕が入ってまして。
永:あら。
秋:中学1年当時、蓮光寺に入って、その、魚を…釣りをして…
一同:ははははは(笑)。
秋:…取ってしまったという(笑)。 親戚ということで、謝らねばと…(笑)
永:(笑)コラッ、この野郎!
一同:はははははは(笑)。
秋:それでですね、あそこは何で僕は知ってるかと言うと…
永:はい。
秋:うちの親戚も檀家で あそこにいて…法事の時に、よくあそこの中 行くんですよ。
永:お檀家のお坊っちゃまだった(一同笑)。
秋:そうです。だから中学で一番あの中 詳しいんで、「秋本、ちょっと案内しろ」って案内させられて(一同笑)…なんかあの…食用ガエルとか捕まえて来ました(笑)。
永:食用ガエルが、うるさかったですねー!
秋:うるさかった!…あそこはですね、池が大きいんで、台風とかになると池が増水して、道路に食用ガエルがバーッと出て来るんですよ(一同笑)。
外:ええー(笑)。
秋:カエルだから飛び上がって…。で、中学の時、それをよく捕まえに行ってましたね。
永:へえー!(笑)
秋:あと、レンギョ(※)が でかくて力があって…あれ、釣ると非常に楽しい魚なんですよ(笑)。(※「魚へんに連」+「魚」)
永:はははは(笑)。
外:はあー。
秋:そういう思い出がありますね、蓮光寺には。
永:つながってたんだ。…どうぞどうぞ、遊んでください(笑)。
秋:ありがとうございます(笑)。
泉:40年越しですね(笑)。
秋:そうですね、40年越しですね。今ようやく謝れます(一同笑)。

泉:で、逆に今度は永さんから質問があったんですが…
秋:はい。
泉:「両さんは、ずっと巡査長なんですか?」ということだったんですけども。
秋:あ、そうですね。最初は巡査…もちろん 巡査だったんですけれども、巡査長の位までは、試験なしで行けるんですよ。実績で。
泉:(笑)
秋:で、巡査部長になるためには 試験を受けないとダメなんですね。
永:ええ。
秋:で、漫画の中でも これを何度かチャレンジするんですけれども…一生懸命 勉強するんですけれども、試験前に寝坊して行かれなかったとか(笑)。(※49-2「両さんの受験勉強の巻」
永:はっはっは(笑)。
秋:なかなか上がれないんですよ。逆に上がってしまうと、ちょっと偉くなっちゃって…部長と同じ立場になっちゃうんで、怒れなくなっちゃうんで。いつまでもやっぱり、巡査長のままでいてほしいなってのがあるんですよね。
外:なるほどー。…でもね、こんなに…今、148巻出てますけども。
秋:ですねえ。
外:こんなに続いてる漫画って(一同笑)…世の中っていうか、世界中探しても無いかも知れないですよねぇ。
秋:無いかも知れない(笑)。だから、我ながら良くそんなにネタがあるなと驚くんですけどもね(笑)。
外:ねえー。
秋:でもね、毎回毎回 新しいのを出したりとか、パソコンが出ればパソコン出したりとか、あと携帯が出れば携帯の話を出したりとか…もちろん下町のも出すんですけども。あとゲームとか流行ればゲームを出したりとか…子どもにも大人にもわかるようなネタを、毎回毎回 考えてるんですね。
永:これだけヒットすると…脇役が登場するじゃないですか。
秋:あ、脇役 多いですね。
永:その脇役が、主役になって…っていうのは。
秋:あ、ありますあります。だからそのたびに主人公が強くなるってのはありますね。食われないように、どんどんどんどんパワーアップするみたいな。
永:そうでしょうね。
外:あの、オリンピックの年にしか起きて来ない人とか…
秋:あ、詳しいですね。日暮ですねー(一同笑)。あれはですね、実は最初 出したの(※1)で「私は4年にいっぺんしか出ない」って言ったら(一同笑)…僕、それ忘れてたんですよ。4年後(※2)には すでに。(※1:21-6「うらしまポリス!?の巻」)(※2:41-6「五輪(オリンピック)男・日暮再登場の巻」
外:ええ、ええ、ええ(笑)。
秋:そしたら読者から手紙が来て、「あの人は今年 出る時ですよね」って読者から指摘されて…
外:(笑)まあー、そうだったんですか。へえー!
永:(笑)
秋:それからはいつも、読者からの手紙で思い出すんですよね(一同笑)。
泉:あの、脇役の名前も葛飾にちなんだ お名前なんですよね。
秋:あ、そうですね。多いですねぇ。
泉:中川さん…
秋:割と…中川とか、本田っていうのもね、「本田(ほんでん)警察」っていうのがあるんですけれども…
外:あー、そうなんですか。
秋:…あそこも最近…本田って書いてホンデンって読むんですよね。ところが最近はホンデンと誰も読んでくれないっていうんで、あそこ「葛飾署」に変わっちゃったんです。(※2002年12月10日に改称。)
泉:(笑)

永:ファクシミリが入って来ました。深谷市のヤマザキミワコさんから「私は61才のお婆ちゃんですが、息子が子どもの頃 ジャンプを読んでいる時に、そっと読んでました。そのうちに息子が『お母さん、先に読んで』と言って、先に読ませてくれるようになりました。その息子も30代になって、今でも読み続けております」…二代、三代にわたってますねー。
外:ねえー。
秋:ああ、なるほどねぇー。
永:さっき、お話うかがってて思うんだけど…
秋:はい。
永:ラジオと同じような作り方ができるんですねぇ。つまり、手紙をいただいて…っていう形でね。
秋:あっ、そうです。読者からの手紙は もちろん参考にするし、僕も小さい頃は やっぱ漫画が好きで、ところが親の世代ってのは あんまり漫画 読まないんですね。それで唯一読んでくれたのが「よたろうくん」(山根赤鬼 作)っていう話で、あれは親も一緒に読んでくれて…
永:はあー。
秋:…で、親と一緒に漫画の話ができるってのが非常にうれしかったんですよ。
永:あ、そうでしょうね。
秋:ええ。だから今も描いてて「お母さんと読んでます」とかそういう風に言われると、非常にうれしいですね…やっぱり。
永:普通、「漫画なんか読んじゃいけません」っていう…
秋:そうです、いけないって言われたんです。
永:普通はね。
秋:で、唯一読んでくれたのがギャグ漫画の「よたろうくん」っていう…落語をベースにした漫画なんですけどもね。

永:で、もう一つ質問なんですけれども…渥美清とのつきあいが僕は古かったんですけれども…
秋:ああ、はい。そうですね。
永:いつ引退するか、辞める時はどういう辞め方をするか…っていう事は あんなに考えてた人はいないんですが…
秋:ああ、そうですね…。
永:あの、山田洋次さんと秋本さんとの対談(※)にもちょっと出て来るんだけど…(※2004年発売の新書「両さんと歩く下町 -『こち亀』の扉絵で綴る東京情景-」に収録。)
秋:はい。
永:その先の話…っていう。今、30周年でしょ?
秋:はい。
永:40周年、50周年…ってのは当然 想定の中に入ってるんですか? それとも…。
秋:いやあー…今から40周年っていうと…10年ですからねぇ(一同笑)。想像しがたい物があるんですけれども、でもやはり…辞める時とかはわからないんですけども、やっぱり毎週毎週の作品ですので、あまりそういうのを考えながら描くと…。やっぱり読者の方も「最近どうなんですか?」とか良く聞かれるんですけれども…とにかく、いつ終わっても悔いのないように、一作一作おもしろい漫画を描く方が。
永:あの、僕も漫画を描いてる人を何人も知ってますけど…体力が要るじゃないですか。
秋:そうですねー。
永:その、描いてる当人の体力が落ちて来ると、当然 登場人物の体力も落ちて来るっていう事があるでしょう?
秋:そうです、まさにそうです。だからあのー…自分で辞める時期を決めなくても、やっぱり描けなくなる時期とかもあると思うし…
永:ああー、はい。
秋:…読者の方も離れる時期とかあると思うし。だから 別段こっちで決めなくても、そういう時期が来るまでは とにかく一生懸命描こうっていうのがありますね。ええ。

永:いや、秋本さんが蓮光寺で庭を荒らしてた話(一同笑)、忘れませんから(笑)。
秋:うわあ、すいませんです(笑)。
永:(連載)続けてて下さい。
秋:はい、わかりましたー。
泉:今日は本当に、どうもありがとうございましたー。
秋:いえ、とんでもないですー。
外:本当にありがとうございますー。
泉:両さんに、よろしくお伝えください(一同笑)。
秋:はい、わかりました。今日はどうもありがとうございましたー。
外:失礼いたしますー。…TBSラジオ「乙女探検隊がゆく〜関東新地図」、今日は漫画家の秋本治さんに、葛飾区亀有界隈を案内して頂きました。



こち亀データベースTOPへ